既存住宅売買瑕疵(かし)保険は検査と保証がセットになった保険ですから、費用はかかりますが、必ず検査を受けなければなりません。
既存住宅売買瑕疵保険にはどんな物件でも加入できるわけではなく、1981年6月1日以降に建築確認を受けた、新耐震基準に適合した住宅であることが原則となります。
但し、もし1981年6月1日以前に建築確認を受けた住宅であった場合でも、耐震基準適合証明書等の書類を提出し、既存住宅売買瑕疵保険の契約に際して行われる現場検査に適合すれば、加入できる可能性はあります。
既存住宅売買瑕疵保険を扱うことができるのは、特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律第17条の規定に基づき国土交通大臣により指定された住宅瑕疵担保責任保険法人で、今現在は、
・(株)住宅あんしん保証
・住宅保証機構(株)
・(株)日本住宅保証検査機構
・(株)ハウスジーメン
・ハウスプラス住宅保証(株)
の、5法人。
この5法人か、もしくは住宅瑕疵担保責任保険法人へ検査機関として登録された事業者が、現場への立ち入り検査を行います。
検査員は「既存住宅現況検査技術者」の有資格者であることが必須ですが、一方で宅建業法の改正による建物状況調査(インスペクション)を実施できるのは「既存住宅状況調査技術者」という有資格者に限られています。
中古住宅購入前に、この建物状況調査(インスペクション)を実施し、必要な部位が調査され、劣化事象等がないなどの条件を満たしている場合には、既存住宅売買瑕疵保険の個人間売買タイプの検査事業者コースにおける住宅瑕疵担保責任保険法人の現場検査を省略することが可能です。
「既存住宅現況検査技術者」と「既存住宅状況調査技術者」。
ややこしいですが、「既存住宅状況調査技術者」を有していれば既存住宅売買瑕疵保険の検査と建物状況調査のどちらにも対応できるということで、建築士資格を保有する「既存住宅現況検査技術者」は、徐々に「既存住宅状況調査技術者」へと移行しているようですね。
では、彼らは実際どのような検査を行っているのでしょうか。
まず思い出してみて下さい。保険対象となるのは、主に“構造耐力上主要な部分”と“雨水の侵入を防止する部分”でした。
まず、“構造耐力上主要な部分”。
基礎のひび割れや欠損、鉄筋の露出やコンクリートの劣化がないか。
床の著しい沈みや傾斜がないか。
梁のたわみや柱の傾斜。
外壁下地のひび割れ、欠損や浮き、仕上げの化学的浸食や浮き、バルコニーのぐらつき。
その他、蟻害や腐食など。
これらを目視や打診、計測によって検査し、基礎鉄筋の本数や間隔については電磁波レーダー法又は電磁誘導法により試験を行います。
そして、“雨水の侵入を防止する部分”。
外部シーリング材の劣化、サッシの隙間や開閉不良、軒裏に雨漏りの跡がないか。
バルコニーについては、防水層の劣化や金物等の不具合を。
屋根材の破損、ひび割れ、浮き又ははがれ。陸屋根の場合は防水層の劣化又は水切り金物等の不具合も。
これらすべて、目視により確認します。
中古住宅購入の際に、最も不安材料となりやすい耐震性能や雨漏り。
これらの箇所をきちんと検査し、必要に応じて修補を行った上でないと、既存住宅売買瑕疵保険には加入できないわけです。
「本当に大丈夫なのか」と不安なまま中古住宅を購入するよりも、講習を受けた有資格者によって検査を受け、不良箇所をきちんと修繕した上で入居できるというのは、保険による保証以上の安心を得られるのではないでしょうか。