日本の住宅事情は、戦後の低質な居住環境に由来する典型的なスクラップ&ビルド型(造っては壊す)であり、それ故にこれまで30年という短い周期での建て替えを必要とされてきました。
しかし、空き家問題も拡大する中、その打開策の一つとしてストック型住宅への移行を目的とし、平成21年6月4日に「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」が施行。
全国的な長期優良住宅の認定実績としては、平成21年度の5万6千戸に対し平成29年度は10万5千戸と倍増していることがわかります。
この長期優良住宅の認定基準については、『劣化対策』『耐震性』『維持管理・更新の容易性』『省エネルギー性』『居住環境』『住戸面積』『維持保全計画』といったいくつかの性能項目があります。
これらに対し、例えば『劣化対策』であれば床下点検口の設置であったり、『耐震性』に関しては等級2が必要であったり、『省エネルギー性』では断熱等級4を求められるなど、細かな基準が定められています。
それによって、長年に渡って構造躯体を使用でき、大地震が起きても改修して住み続けることができ、また省エネ性により快適な生活を送ることができるのに加え、メンテナンス性の高さと計画的な維持管理によって何世代にも渡って人が住み続けることのできるストック型住宅が実現するというわけですね。
基準の詳細については、住宅性能表示制度の評価方法基準が引用されていますので、そちらを参考にしてみて下さい。
新築住宅の住宅性能表示制度ガイド
但し、これだけの基準を満たそうと思うと建築コストがかなり高額になってしまうのも事実であり、住む人の価値観も「断熱性は重視するけど省エネにはそこまで拘らない」「メンテナンスはしやすい方がいいけど、手間やお金はかけたくない」と、様々。
そこまでお金をかけられない、計画的に維持管理していくのが面倒、申請から認定までの手続きが複雑…といった理由により、今ひとつ普及しづらい面があるのも事実なのです。
このように考えてみると、デメリットというほどではないにしても、長期優良住宅の認定を受けることに抵抗を感じる方も多いのではないでしょうか。
なんとなく、空き家対策に向けた国の制度のために高額な費用をかけて家を買い、小まめメンテナンスをしているような気になってしまいますよね。
もちろん、長期優良住宅は住む人にとってもメリットは大きく、ただ「長く快適に住める」だけではなく、将来的にも家を売りやすい、子供が住み続けることになった場合にも大きく手を加える必要がない、というメリットもあるのです。
わかりにくい家の品質において、きちんとした基準に基づいて評価されているという安心感もありますね。
また、長期優良住宅には様々な優遇措置も用意されています。
例えば、住宅ローン減税における限度額の優遇措置。一般の住宅で4000万円のところ、長期優良住宅の場合は5000万円まで引き上げられるため、借り入れ額の1%が控除されると考えると最大で100万円控除額が増えることになります。
その他にも、不動産取得税や登録免許税の軽減だとか、固定資産税の減額措置であるとか、様々な税制上のメリットがあるのです。
住居というのは住む人、家を買う人(建てる人)の価値観による部分が大きいので、コストや手間暇かけても絶対に長期優良住宅にすべきだとは、一概には言えません。
税制上の優遇措置に関しても、例えば住宅ローンを4000万円までしか借り入れない人にとっては、住宅ローン減税における優遇措置は享受できないわけですから、誰にとってもメリットがあるわけでもありません。
あなたのご家族のライフスタイルや将来的な見通しなど、長期的に考えてメリットがある、価値があると判断できるのであれば、認定を受けてみる。
そのように考えてみてはいかがでしょうか?